2009年10月01日

君の知らない物語

君の知らない物語君の知らない物語
supercell
SMR
発売日 2009-08-12




この音楽を聴いて僕は、生まれて初めて見た 満天の星空を思い出した。


 夜の闇という存在に、真に恐怖心を抱いたのは、そう遠くない昔の話だった。

一寸先は闇という言葉そのものの風景。"月影"の影という言葉が、光そのものを指すという古語の意味を、ふつふつと感ぜられた心境を覚えている。





 畏怖の念。言葉はもはや意味を失い、おおよその表現では表しえぬ情景。

 自分なんてものは、この星から比べてしまえば 塵にも満たない、なんて儚い存在だろう。



 それ以上見たくないと思った。

 今目の当たりにしている世界は、この世のものじゃない。 明日が来れば、否応なく空気の淀んだ現実へと戻らねばならないのだから。



 傍にいる誰かが、「綺麗だね」と言った。

 余計な思惟など捨て置いて、心の赴くままにその光景を堪能すれば良かったと、自身を責める時分もあった。

 しかし今となっては、その時はそれで良かったのだと、その時の責苦を許す、少しばかりの心の余裕も得た。





 この音楽には、"未完成の美学"という言葉が相応しいのではないだろうか。

イントロからさわやかな透明感を帯びたnagi氏のヴォーカルと、ピアノ、時に激しいギターチューンからなるメロディラインは、

答えを求めてただ当ても無く奔走するといった、思春期の淡い心象情景が彷彿とされる、清純なティーンズ・バンド・ポップという感銘を覚える。



 作中人物のひとり歩きした恋愛感をつらつらのたまうような、キャラクターソングなどの見地からは遠く離れている。

nagi氏の歌う女性像は、この作品の中でひとつの恋物語を歌い上げるが、彼女自身その境地を未だ恋だとはっきり認識しえていない。

あなたのことが好きなのかもしれない。でも、どうすればいいのかわからない。私がどうしたいのかさえ、わからない。 そんな切なさが垣間見えるのだ。



 音楽作品の中でひとつの物語を創り上げる。

ミュージック・アーティストの多くは自身のキャラクターを作り上げる。それは作品に投影されるべくものでなく、商用の武器といった意味が含まれる場合さえある。

今、純粋に音楽のみで勝負できる存在というのは、稀有なものだ。 supercellの今後の展望に大いに期待したい。


posted by エンタメ at 18:21 | Comment(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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